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すこしのつぶやき
by tubara-tubara
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室見川の岸に



むかし
国鉄筑肥線が
室見川に
鉄橋をかけていて
その下で
私は
お手玉の中に入れる
おじゅず草をつんだり
たいそうがにをとったり
ひとり遊ぶのが好きでした。


私の家は
川岸。
悲しくて
あまり
その時のことは
筆であらわせません。


家の周りには
おいらん草
かんな
おしろいばなが咲き
母はちいさな庭に
お花を育てるのが好きでした。


そのころから
ずっと
わたしも
お花が好きでした。


お花の名前は
なんでも
母から教わりました。
どんな花も好きですが
ひとつだけ
恐ろしく
まがまがしく咲くのは
オニユリ。


あの
お花だけは
こわくて
美しいを通り越した
魔を
感じます。



いまだに
苦手で
あちらも
わたしをお嫌いのようで
もう何年もお目にかかっていません。


小学1年生のころが
いちばん
寂しかったかな。
母は、福岡記念病院に入院していました。
入学式に着る服は
中尾の西鉄ストアで
叔母に買ってもらって。


記念病院も
今のように
きれいではなく
評判もよくなく


「だいじょうぶかいな・・・
あそこ
おばあちゃんが
やぶっていいよった。」


そんなことを
覚えています。


最近、わけありで病院にかかりました。
1ヶ月前
父が検査入院で
電話をくれたところです。


診察が終わり
「まさか、お父さんもうおらんよね。」


外来から、呼吸器科病棟に向かいました。


だんだん
どきどきして。
何度もやめようとしました。


いくつも病室の前を通って
あった・・・
父の名前。


4つに区切られた
病室。
あの時と同じ窓辺のベッド。



「おとうさん、なんでここにおると?」



悪い予感は
あたるもので。



「あぁ、おれガンやったとたい・・・」


「なんで来たとや?」


「うん、ころんで怪我して形成外科に来て・・・
まさか、もうおらんよねと思ったら
おるっちゃもん。」



今の奥さんの連れ子さんが
主人と同い年で
小学1年生のとき
再婚したと聞きました。


わたし、その息子さんが
とてもうらやましくてですね。
いちばん
さみしいときに
こいしい父は
他の子のお父さんに
なっていたことが
せつなくてね。


過去の悲しさなんて
忘れていたはずでした。


やはり
昇華できていなかった。


帰りしな

「ころんだけん
あえてよかった」


「こら」


あたまをかるくたたいた左手が
肩にふれました。
おかしなもので
父親なのに
異性を感じました。
父、昔の男前なんですね。



うちに
帰り
過去に慟哭。



だれにも
せつない過去があります。
本の1冊2冊書けると思います。



昔は手が付けられなかった
やさぐれた私が
たくさんの方の愛情や出会いで
2児の母になり
幸せにすごしております。



接客でも
あんまり
おこらなくなりました。



こうやって
歳をとるのですよ。



室見川の岸辺は
わたしにとって
原点です。



いまも水と花が好きなことに
変わりはありません。



来週も病院の診察があります。


父が抗がん剤と
放射線治療を頑張りながら
娘の見舞いを待ってくれています。



会いにいきます。


まっていてね。


花が咲く
風が吹く
この世はこんなに美しい。
だから
生きよう。


その場所は違っていても。


by tubara-tubara | 2011-04-13 22:27 | むかしばなし